絵本を買うとき、どのようにして決めていますか?
子どもが気に入ったから、子どもの好きなものが書かれている本だから、物語がいいので読んでほしいから、など、いろいろな理由があると思います。
絵本を選ぶとき、子どものために、いい絵本を選んであげたい、喜ぶ本を見つけたい、楽しい絵本を読んであげたい、など、いろいろと考え、悩むことがあると思います。書店に行くと、数多くの絵本が置いてあります。その中から、子どもに合った一冊を見つけようと思うと、なかなか難しいですよね。
この記事は、親子で素敵な絵本やお気に入りの絵本に出会うきっかけにしてもらいたいという思いを込めて書きました。絵本選びのきっかけや参考になると幸いです。
絵本を読ませることで期待できることは?
絵本が子どもにとっていい物であるということは、多くの方が知っていると思います。ここでは、絵本が子どもの成長にどのような影響をもたらすか詳しく書いていきます。
読書の楽しみを知ることができる
子どもは、絵本を大人に読んでもらうことで、絵本の楽しさを知ります。同時に、大好きな人が自分に向かい合い、語りかけてくれる喜びや愛情を感じます。この経験を通して、子どもは「読書の楽しみ」という、これからの人生にとってかけがえのない楽しみを得ることができます。
読み聞かせる大人、自分自身が絵本を楽しむことで、子どもにもその楽しさが伝わります。「子どものために読む」のではなく、「一緒に楽しむために絵本を読む」時間にしていくことができたらいいですね。
子どもの心を広げ、生きていくことに対する希望や可能性を広げていくことができる
絵本の世界の中で、子どもは、「嬉しい」「悲しい」「楽しい」「不安」など、自分自身が日常生活の中で体験するような感情を経験します。
絵本を通じて、人間の心の変化を知ることができ、感情が豊かになる、つまり、心が広がっていきます。
絵本の物語の中には、人間として大切なことが書かれています。愛し、愛される、友情、正義と善、一歩踏み出す勇気、やさしさ、ユーモア、悲しみや喜びへの共感、支え合って生きる、働く、自分を見つめること…など、話で伝えるのは難しいことも、物語を通じて、子どもは、生きていくことに対する希望をもち、社会への道すじを知ることができます。
学ぶ力が身につく
まず、大切なことを伝えておきます。絵本は楽しむものです。しつけや勉強の道具ではありません。もし、大人が、しつけや勉強のために絵本を与えていたら、絵本の楽しみは半減してしまいます。
子どもは、夢中になって楽しむことを通して、自然に学ぶ力も身につけていきます。絵本を楽しむことで身につく力には、以下のようなものがあります。
- 言葉の力(豊かな語彙を使って、自分の思いや考えを表現する)
- 話を集中して聞く力
- 思考力や想像力
- 活字(文字への関心)や本への親近感
- 知的な好奇心
いい絵本は、子どもの心と人としての能力を育てるのです。
2歳の絵本の選び方
絵本を選ぶとき、3つの要素に着目してほしいと思います。
- 絵
絵本の絵は、子どもにとって初めて出会う美術です。いい絵に出会うことで、美しいものへの感性が育ちます。 - 言葉
話し言葉とは違う「文章としての言葉」を、身近な大人の声で読まれる物語の楽しさにのせて、身につけていきます。 - 物語
子どもの心に寄り添い、子どものこころを広げてくれる物語に出会うことで、よりよく生きていこうとする子どもの心は励まされていきます。上記の要素がいいものであると、いい絵本と言えます。
2歳児の発達や興味に合った絵本を選ぼうと思うと、まずは、2歳児の特徴について知ることからです。ここでは、おおまかに、2歳児の発達の特徴と、それに合った絵本の内容を書きます。
もし、友だちと関わることが増えてきたら、身近な友だちについて描いてある絵本を読んでみましょう。絵本の中には、友だちと一緒に遊ぶ楽しさや、けんかをしたときの気持ち、友だちとの心地よい関わり方など、友だちと関わっていく上で大切なことが描かれています。
他にも、トイレに自分で行くようになってきたら、排泄に関する絵本を選ぶ、おままごとが大好きだったら、食べ物や料理を作る物語の絵本を選ぶなど、子どもの姿をよく見て、その時期に合った、子どもの心や興味に寄り添える絵本選びができたらいいですね。
同じ年齢でも、成長の早さや関心はそれぞれ異なります。そのため、その子に合った本を選んであげてください。
参考:乳幼児における絵本の自発的選択傾向
2歳におすすめの絵本はこれ!
2歳児向けのロングセラー絵本
まずは、25年以上読み継がれているものを選んでみてください。長い間人々に愛されてきたものは、テーマも表現も、子どもたちにふさわしいすぐれた絵本といえます。
ぐりとぐら
作:なかがわ りえこ 絵:おおむら ゆりこ 福音館書店
誰もが知っているロングセラー絵本です。青と赤のつなぎと帽子がトレードマークの、仲良しふたごの野ねずみが主人公です。森の奥で、見たことのないくらい大きなたまごを拾い、とてもおいしそうなかすてらを作り上げます。カステラを焼く匂いにつられて、森中の動物たちも集まってきます。先の展開をドキドキしながら読みすすめられ、想像力がふくらむ絵本です。
長年愛される絵本シリーズ
ねずみくんのチョッキシリーズ
作:なかえ よしを 絵:上野紀子 ポプラ社
目には見えないけれど、大切なことを小さなねずみくんが教えてくれます。シリーズは全部で40冊あり、人の気持ちや思いやりなど、大切なことを学べる絵本です。
読み継がれる名作絵本
ねないこ だれだ
作・絵:せな けいこ 福音館書店
怖い絵本だけれども、子どもが何度も「読んで」と持ってくる絵本です。おばけが出る時間まで起きているとどうなるの?が描かれています。ラストは、おばけが寝ない子をおばけの世界に連れて行ってしまいます。シンプルな絵と独特のストーリーで、子どもたちをひきつけてやまない絵本です。
2歳児が大好きな定番絵本
だるまさんがシリーズ
作:かがくい ひろし ブロンズ新社
だるまさんシリーズは、2008年発行されて以来、子どもたちに大人気の絵本です。現代の子どもたちで「だるまさん」シリーズの絵本を知らない子はいないといっても過言ではないと思います。シンプルな言葉の繰り返しなので、子どもも一緒に声を出しながら楽しむことができます。ページをめくるたびに笑ってしまう、そんな絵本です。
人気のベストセラー絵本
はらぺこあおむし
作:エリック カール 訳:もり ひさし 偕成社
絵本に出てくる、美しい色彩で描かれるあおむしやちょう、食べ物などは魅力的です。絵を見るだけでも、とても楽しめます。ちっぽけだったあおむしが、美しいちょうになるという物語は、元気と希望をもらえます。
口コミが高い絵本(楽天)
パンどろぼう
作:柴田 ケイコ
年齢問わず人気の絵本です。絵がかわいく、物語が面白いという口コミが多くあります。おいしいパンを探し求めているパンどろぼうの物語は、親子で楽しめる1冊です。
親子で楽しむストーリー
めっきらもっきら どおんどん
作:長谷川 摂子 絵:降矢 なな 福音館書店
遊び仲間が見つからないかんたは、お宮でへんてこな妖怪たちと出会います。個性的な妖怪たちと楽しく遊んでいましたが、途中でお母さんのことを思い出し…。友だちと遊ぶ楽しさを味わったり、お母さんを思って心細くなったり、かんたの気持ちに共感しながら、躍動する言葉と絵が、親子を夢中にさせてくれるファンタジー絵本です。
男の子におすすめの2歳向け絵本
三びきのやぎのがらがらどん
作:マーシャ・ブラウン 訳:せた ていじ 福音館書店
三びきのやぎの「がらがらどん」は、橋の向こう側の山で、たくさん草を食べようとします。しかし、橋の途中でトロルという化け物にひとのみにされそうになります。そのとき、3びきはそれぞれ、知恵と勇気と強さをもって、トロルと向き合います。ハラハラどきどきしながら楽しめる絵本です。
女の子におすすめの2歳向け絵本
しろくまちゃんのほっとけーき
作:わかやま けん こぐま社
しろくまちゃんがお母さんと一緒にホットケーキ作りに挑戦するお話。ホットケーキが焼けるときの音と絵が描かれ、焼き上がる楽しみを感じることができます。これを読んだら、ホットケーキが食べたくなります!!
動物や乗り物がテーマの絵本
もりのおふろ
作:西村 敏雄 福音館書店
森のおふろに、次々動物たちがやってきて、みんなで背中を洗い合う姿がかわいい物語です。みんなでお湯につかって、極楽極楽、いい気持ち!次にやってくる動物が何かワクワクしながら、一緒に「ごしごし しゅっしゅ」と声に出して楽しめます。
かじだしゅつどう
作:山本 忠敬 福音館書店
消火活動をする、さまざまな消防車が迫力のある絵で描かれています。消防員たちがホースで放水する様子や、酸素マスクをつけてはしごを使い救護する様子など、緊迫感ある火事の現場が伝わります。
おとぎ話やプリンセスの物語
あかずきんちゃん
しらゆきひめ
いろいろな出版社から出ており、会社によって少しずつ話の内容が違います。お子さんにあう内容の絵本を選んで読んでみてください。
言葉や数を覚える絵本
あかたろうの1.2.3の3.4.5
作:きたやま ようこ 偕成社
あかたろうが帰ってくると、お母さんがいません。おばあちゃんに電話して、そこから次から次へと電話でお母さんの居場所を追いかけます。物語の中に、数が出てきます。電話番号やお母さんの買った物の数。絵本を楽しみながら、数への興味がわいてくる絵本です。
あっちゃんあがつく たべものあいうえお
原案:みね よう 作:さいとう しのぶ リーブル
左側のページには、ひらがな五十音でつくられた文章、右側のページには、その文に合わせた絵が描いてあります。細かい場所まで丁寧に描かれた楽しい絵と、リズム良い文。歌うように読み進めるうちに、自然とひらがなに興味を持ち、覚えられる絵本です。
お母さんも安心!知育絵本
みんなうんち
作:五味 太郎 福音館書店
生き物は食べるから、みんなうんちをすることや、いろいろなうんちがあることが分かり、身近な科学について楽しく理解できます。
知育に役立つ2歳向け絵本
はなをくんくん
文:ルース・クラウス 絵:マーク・シーモント 訳:きじま はじめ 福音館書店
冬眠から目覚めた動物たちの姿を美しい絵と文で描き出してある絵本です。季節が変わることや、冬眠する生き物がいることなど、物語を通して知ることができます。
最後に
筆者は、保育園で10年間働いていたことがあり、さまざまな絵本にふれてきました。現在は、小学生の子どもを育てる母として、毎日、絵本や児童書を見ています。
職場や家庭で絵本を読み聞かせているとき、子どもたちは食い入るように夢中で絵本を見ます。面白かったら大笑いし、ハラハラドキドキするときは真剣な表情になり、悲しいときには、まゆげがさがり、悲しい表情になり…表情豊かに、絵本の世界を楽しむ子どもたちの姿に、微笑ましい気持ちでいっぱいになっていました。
私自身は、日々の忙しさに追われ、自分に余裕がなくなったとき、不安や悲しみにおそわれたとき、絵本を読むことで心が穏やかになることが何度もありました。絵本の中に出てくる登場人物の一言に強く励まされることもありました。大人になった今も、絵本から力をもらっています。
谷川俊太郎さんの『すきノート』という本の中で、「育つにつれて苦しみ、哀しみを知ってゆくのは避けられないけれど、何かを誰かを好きになることは、生命の原動力だと思う。」と、書いてあります。子どもが成長するにつれ、悩みが増え、毎日言い様のない不安を抱えていた時期に、私はこの言葉に出合いました。励まされ、そして、自分ができることの答えを見つけられた、そんな気持ちになりました。
子どもに、自分にも、「好き」と感じる物や人に多く出会えるようにしていきたいと思いました。その一つに、絵本があります。ぜひ、みなさんも親子でお気に入りの絵本に出合ってください。絵本タイムが、穏やかな、楽しいふれ合いの場になるよう願っています。